事業部紹介
【訪問記】

■■■ 行ってきました 「風の谷」事業部 ■■             文 /井上
写真/米倉


   

社会福祉法人「風の谷」が運営する自閉症者通所施設「やまびこ工房」(注1)の厨房で利用者さんの食事作りをしている「風の谷」事業部のメンバーがどんなふうに働いているのか訪問してきました。

晩秋とはいえ小春日和となった11月18日の午前、JR相模線番田駅に降り立ちました。

番田駅 お地蔵さん
住宅街の中にある昔ながらのこじんまりとした駅から歩いて20分ほど。お地蔵さんが目印、と聞いてきたとおり、おだやかな顔をしたお地蔵さんが角でお迎えしてくれました。

住宅地と畑に隣接した建物の入口に「社会福祉法人風の谷 やまびこ工房」の表札がありました。
到着です。
やまびこ工房
入り口
施設長の中島博幸さんにお会いし、ホームページのための取材許可をいただきました。
社会福祉法人風の谷を立ち上げたのは、
「自閉症の人達のために、福祉、これをやりたい。それのみです。当たり前に生きることが難しい人々がいることをわかって欲しい」と力を込めて話されました。
「今は経営を優先される施設が多くなっていますが、ここでは“福祉”を優先させていきたい。他から来た利用者さんが最初、無理に食べ物を口一杯にほおばっていた。食べることが楽しみでなければ。キュービックさんには、食を大事にしたい、ということを理解してもらえて有難い。本当に手をかけておいしい食事を作っていただいています」とのお話をいただきました。

畑

      

食堂  

さて、さっそく食堂に入っていくと、シャッターが下りています。中からはとてもおいしそうな匂いがしてきました。

  食堂

ノックをしてドアをあけると、メンバーの関田さん、山中さん、そしてメイトの田辺さんが食事作りの真っ最中。オープンの11時半を前にフル回転、という感じで忙しく調理中でした。
 
厨房

今日のシフトに入っている3人の他に、毎日3人体制で全部で8人のメンバーが交代で週に平均2回入っているそうです。メイトの田辺さんは4回!頼れる助っ人です。
短時間に多くの食数を調理していますが、3人ともとてもスムーズに動き回っています。「特に役割分担はしていないけれど、大体段取りが決まっているので自然に仕事を分け合っていますね」と山中さん。なるほど、配膳を終えたメンバーがいつの間にか使い終わった調理器具を洗っていたり、別のメンバーはポットにどんどんお湯を入れていたり。こうした連携プレーが出来るのもチームワークが良いからこそと思いました。

特別食 名札付き特別食

気がつくとお皿に紙の名札がいくつも貼ってあります。
「それぞれ違う盛り付けがあるので」と関田さん。食にこだわる利用者のために、それぞれの方に合った調理方法や盛り付けで対応しているそうです。
                     * * *
特別食と呼ばれる別メニューも作るそうですが、おかずの個数にこだわる利用者さんもいるとのことで、名札がついている分だけ「特別食」のようなもので、利用者さんにこんなに気を使っていることに感心しました。これでも「今日は特食が少ないから楽」ということでした!

 

sample

→
冷蔵庫へ

サンプル用
おかずの横に小さなパックが。中には調理品のサンプル。「保健所の指導で毎食のサンプルを2週間分保存しています」とのこと。忙しい中にもうひと手間の作業ですが、衛生面も徹底していることがわかりました。


 そうこうしているうちに11時30分。

カウンター シャッターを開けたら、待ちかねていた利用者さんがカウンターの向こうに並び始めました。皆、とてもニコニコしています。本当に食事を楽しみにしているのがわかります。自分で味噌汁をよそう利用者さんも。カウンターに来る利用者さんに「こんにちは、○○さん」とにこやかに声をかけながら配膳していくメンバー。すっかり厨房になじんだ姿に、ここまで築き上げてきたメンバーの努力が伺えました。

利用者さんは三々五々、カウンターに現れますが、「こんな状態が2時ごろまで続くので、その間に交替で食事をしています」とのことでした。


ちょっと人が途絶えたところで、3人一緒に写真撮影。

 
 
笑顔がすてき
 
 


*
利用者さんは私たちに対して
あまり反応を示さないので、
コミュニケーションという意味では
とれていないと思いますが、
かといって拒否ということもないので 、
私たちのことを認めてくれているんだなぁ
と思って一生懸命作っています。

*

 

 

・・・ と、その時「すみませ〜ん!」とカウンターから声が!
 忙しい中を取材に応じて下さったメンバーの方々に感謝しつつ、12時過ぎに風の谷を後にしました。


キュービックには食を預かる事業部があと2つ。
本部食堂とラポールのメンバーとも、たまには交流会などを開いて献立の工夫などについて話し合ったらもっとバリエーションも広がるのでは、という話も出ました。
キュービック全体でこれからも協力しつつ、お互いが成長してそれぞれの仕事をより良いものにしていけたら良いと思いました。
                                      

   

 

 

 

  • <風の谷事業部 お仕事のQ&A>
    Q.毎日何食ぐらい作りますか?
    A.利用者さん、職員さん、私たちの分も含めて60食ぐらいです。今日は61食です。以前よりも増えました。
    Q.仕事の時間は?
    A.午前9時から午後2時すぎまでには終わるようにしています。今日は食堂の掃除日なので8時45分に来ました。
    Q.買い物はどうしていますか?
    A.メンバーの原さんが週に数回。あとはコープかながわのおうちコープ(宅配)を利用しています。
    Q.献立はどうですか?
    A.利用者さんは総じて肉料理が好きですから、その時は残菜はほとんど出ません。野菜の煮物などはあまり好まれないようで残菜が多いですね。なるべく肉と野菜を一緒に食べられるように献立を工夫しています。風の谷の職員さんと定期的に「給食委員会」を開催して、残菜の量をチェックしたり、どうしたら残菜が減らせるかを検討して献立を考えています。
    Q.新メニューも出しますか?
    A.はい。職員さんに試食していただき自分たちでも食べて、OKならば出しています。
    Q.何か困ったことなどありますか?
    A.困ったことではありませんが...
    *特には...。やっていて楽しいです!
    *10年経ったので設備の故障が出始めました。でも施設の方で修繕してくれるので。
    *業務用の調理台なので、ガスレンジの五徳も大きく、よくやけどします。余熱もいつまでも高いのでまわりに置くものにも気を配ります。
    Q.工夫していることは?
    A.隣のナウシカ(注2)の利用者さんで、こちらで昼食をとられる方もいらっしゃるので、夜の献立がダブらないように気をつけています。あちらの献立を先に見せられたときには急いで献立を変更します(といって、鉛筆書きの修正が一杯入った献立表を見せてくれました)。

 

<本日の献立>
韓国風焼き鳥、野菜と油揚げの煮びたし、みそ汁、ご飯。
今日の献立   日誌
「味見、どうぞ」と山中さんが持ってきて下さいました。おいしい!味加減が丁度良い。田辺さんが持ってきて下さったトマトも新鮮でおいしかった。毎日、業務日誌に職員さんが交替で食事の感想を書いて下さいます。味見をさせていただき、職員さんにも好評なのが納得出来ました。

(注1)自閉症者通所施設「やまびこ工房」は自閉症者をはじめとした障害を伴う人々が、良き隣人として違和感なく地域社会に受け入れられ、夫々の個性を発揮しながら活き活きと地域生活を送ることが出来る社会こそが、真に豊かな社会であることを確信し、その実現を期するべく活動します。(やまびこのホームページより引用)

(注2)ケアホーム ナウシカは相模原地区唯一の、自閉症者支援の専門施設がバックアップする『体験型のグループホーム』として、開所以来積極的な運営を行ってきました。平成18年10月からは、本格的な居住支援を目指し共同生活介護事業(ケアホーム)へと転換しましたが、今後は利用者のQOLを高めるための取り組みを積極的に進めていくものとします。共同生活を営む住居で、入浴、排泄、食事の介護など、主に夜間に提供されるサービスです。個人個人のライフスタイルを大切にしています。(やまびこのホームページより引用)

   

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